ぎっくり腰(急性腰痛症)とは
読んで字の如く急激に発症した腰痛を指し、欧米ではその激しい痛みから「魔女の一撃」とも呼ばれます。
多くは一週間~二週間程度で自然に回復していきますが、時間経過によって改善が見られない、または下半身に痛みやしびれと言った症状が出現した場合などは椎間板ヘルニアなどの病気が隠れていることがありますので要注意です。
ぎっくり腰は痛みが強いのでついつい横になって休んでしまうことが多いですが、できるだけ安静にしない方が早く治ると言われています。
たくさんの研究がありますが、「ぎっくり腰になった時に安静にしていたグループと、できるだけ普段通りの生活をしていたグループを比べると、痛いながらも普段通りの生活を心がけたグループの方が良くなることが多かった」ということが分かっています。
お体の状態は様々ですので、安静が絶対に悪いというわけではありませんが、痛いながらも、できるだけやれる事をやるということが、改善の近道になりそうです。いつもの家事を少しずつやってみたり、職場の理解が得られるなら、重いものを持ったりすることは避けて軽い仕事から復帰してみたり。こういったことを心がけることで、結果的に早く良くなるということが言えると思います。
ぎっくり腰の症状は、急な腰の痛みで突然動けなくなることが多いのです。具体的には以下のような感じです。
- 鋭い痛み: 突然の鋭い痛みが腰に走り、動くのが困難になる。
- 動けない: 痛みのために立ち上がることや座ることができなくなる。
- 筋肉の緊張: 腰の周りの筋肉が硬直し、さらに痛みを引き起こす。
- 痛みの持続: 初期の鋭い痛みが和らいでも、しばらくの間鈍い痛みが続くことがある。
原因としては重いものを持ち上げた時や、不意の動作で筋肉や関節に過度な負担がかかることが多いですよ。
また、ぎっくり腰は、腰の筋肉や関節に負担がかかることで起きることが多いです。具体的には、以下のような原因が考えられます:
無理な姿勢や動作: 重いものを持ち上げたり、長時間同じ姿勢で座ったりすることで、腰に負担がかかります。
急激な動き: 突然の動きやジャンプなどが原因で、腰の筋肉や関節に急激なストレスがかかります。
筋肉の貧弱さ: 腰の筋肉が弱いと、他の筋肉が過度に使われることで、ぎっくり腰を引き起こすことがあります。
年齢: 年齢を重ねると、腰の構造が変わり、ぎっくり腰を起こしやすくなることがあります。
これらの原因を避けるために、適切な姿勢を保つことや、腰の筋肉を強化するエクササイズを取り入れることが大切なのです。
これらに共通するのは、中腰の姿勢で行う動作だということ。中腰は椎間板に圧がかかりやすい姿勢で、特にヘルニアなど腰に問題を抱えている人にとっては、トラブルを引き起こしやすい姿勢なのです。

しかし、ぎっくり腰のはっきりとした原因はいまだ解明されておらず、ぎっくり腰になった時に体の中で何が起こっているのかは実はよく分かっていません。
言い換えれば、ぎっくり腰(急性腰痛症)とは、腰椎(ようつい)椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)、腰椎圧迫骨折など、はっきりした病名がつかない全ての急性腰痛の総称ともいえるのです。
前述の通り、ぎっくり腰の早期回復には普段通りの生活を心掛ける必要があります。楽になるようなら湿布や痛み止めなどを使っても構いませんし、痛みを我慢してまで行う必要はありませんが、軽いストレッチなどを行うのも悪くはないでしょう。温めたり冷やしたりは、より楽になる方を選んでいただければ間違いありません。
他の病気が潜んでいることも
ただ、怖いのは椎間板ヘルニアや圧迫骨折などの病気が潜んでいる場合です。あまりに痛みが強い場合や症状の改善が見られない場合などは、自己判断を避け、整形外科の医師を受診することをお勧めします。
前述の通り、ぎっくり腰になった時に身体の中で何が起こっているのかは、実ははっきりとしたことは分かっていません。ぎっくり腰になる原因もさまざまですので一概に「これで予防が出来る」とは言えませんが、腰に普段とは異なる負担をかけないことが大切だと考えています。
ぎっくり腰と間違いやすい病気やけがとしては次のようなものがあります。
・高齢者では、骨粗鬆(しょう)症に伴う脊椎の圧迫骨折の可能性もあります。
・足のしびれなど他の症状もある場合は、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症なども疑われます。
・ぎっくり腰を繰り返している人は、椎間板ヘルニアをはじめとした、背骨の病気が隠れている可能性もあります。
あくまで経験則ですが、以下のような場合にぎっくり腰を発症しやすい印象があります。
①長時間同じ姿勢でいた後の動きはじめ
長時間同じ姿勢でいた後は、筋肉が上手く働かなかったり、関節が固まってしまったりすることがわかっています。長時間車を運転していたあとや、朝起きてすぐ、デスクワークの後など、瞬発的に体を動かしたりするとぎっくり腰を発症しやすいと言えるでしょう。
②睡眠不足や疲れが溜まっている時
人間の身体は睡眠不足や疲れが溜まっている状態では本来の動き方とは異なったパターンで体を動かすようになることがわかっています。そんな時に腰を曲げる動きなどをすると、腰に負担がかかりぎっくり腰を発症しやすくなります。
③運動不足
筋肉や関節を大きく動かす機会がほとんど無く、身体を上手く動かせない場合には、ふとした時にぎっくり腰になってしまうことが多いように思います。日頃から背骨に「曲げる・反らす・捻る」という動きをさせてあげることで予防することが出来るかもしれません。一日一回、ラジオ体操などを行うのがお勧めです。

病院に行くべき、ぎっくり腰の症状
・何度もぎっくり腰を繰り返す、またはなかなか治らない
いったん急激な痛みは回復しても、何度もぎっくり腰を繰り返す、あるいは2週間以上経っても回復しない場合は、椎間板ヘルニアをはじめ、他の病気からくる痛みの可能性があります。病院を受診して、原因をしっかり調べてもらうと安心です。
・下肢に痛みやしびれがある
下肢の痛みやしびれは、ただのぎっくり腰ではなく、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアの疑いがあります。整形外科を受診して、専門医による診断を受けましょう。
・下肢の麻痺(まひ)や排尿・排便障害などがある
このような症状がある場合は、早急に病院を受診してください。下肢の麻痺症状や排尿・排便障害がある場合は、腰に大きな神経障害が起こっているサインです。すぐに治療が必要で、場合によっては手術が必要なケースもあります。
・安静にしていても腰痛が回復せず、むしろ悪化している
骨粗鬆症等による腰部の圧迫骨折や内臓の病気、ごくまれにがんの脊椎転移などの可能性もあります。
・発熱、嘔吐、血尿などがある
脊椎炎などの感染症によって発熱することがあります。他にも、発熱や嘔吐などの症状がある場合は、内臓の病気が隠れている場合も。尿路結石が原因の腰痛、血尿の可能性もあります。
特に、下肢のしびれや麻痺、激しい腰の痛み、発熱や嘔吐、血尿など重篤な症状がある場合は、受診の目安となる2週間を待たずに、できるだけ早く受診することをおすすめします。
なお、セルフケアによって1週間から10日で回復すれば、特に受診の必要はありません。ただし、一度治まっても、ぎっくり腰を繰り返す場合は、別の病気が隠れていないか調べるために、受診しましょう。

ぎっくり腰の治し方
ぎっくり腰になったら。急性期のセルフケア
ぎっくり腰の痛みが強く出ている時はむやみに動かず、自分が最も楽な姿勢でゆっくりと深呼吸を繰り返し、まずは痛みを落ち着かせましょう。激しい痛みが治まるまでは、患部を冷やすより、温めるほうが楽になる人が多いといわれています。
ぎっくり腰には市販の湿布薬や鎮痛剤も有効です。自宅に常備していれば、使うことで痛みが楽になることも。湿布薬は冷感タイプではなく、ロキソプロフェンナトリウムなど配合の外用鎮痛消炎剤を選ぶとよいでしょう。

・寝る姿勢
ぎっくり腰になると、大半は仰向けで脚を伸ばして寝るのは困難です。筋肉や骨の構造上、仰向けになり脚を伸ばすと腰に力が集中してしまうためです。
強い痛みがあるうちは、膝の下に丸めた毛布やクッションなどを置き、膝が90度程度曲がった状態で寝ると、楽だと感じる人が多いでしょう。また、痛いほうを上にして横になり、膝の間にクッションを挟んだり、抱き枕などを抱いて寝るのもおすすめです。
・お風呂
温めたほうが、痛みが楽になる場合は、入浴もおすすめです。無理のない範囲で、温かいお湯にゆっくり浸かって体を温めましょう。入浴には血液の循環の改善、浮力による腰の負担の軽減、自律神経のバランスが整うリラックス効果などがあるため、お風呂に入ると痛みが楽になる人は多いですが、逆に、入浴によって痛みが強くなる場合や、腫れがある、患部が熱をもっている時などは、入浴は避けたほうがよいでしょう。

ぎっくり腰からの早期回復には普段通りの生活を心がけよう
ぎっくり腰の痛みが強いうちは、横になって休む時間が長くなりますが、痛みが落ち着き、少し動けるようになったら、できるだけ普段通りの生活を心がけたほうが、早く回復することが分かっています。
イギリスの医学誌に掲載された研究では
①ベッドでの安静
②治療家による施術を受ける
③できる限り通常の日常生活を過ごす
という3グループに患者を分けて実験したところ、③のできる限り通常の日常生活を過ごすよう心がけたグループが最も回復が早く、①のベッドで安静にしていたグループが最も回復が遅かったという意外な結果※が出ました。
※ A Malmivaara,et al.N Engl J Med 1995;332(6):351-5.
他の研究でも同様の結果が出ており、動けないほどの激痛でない限り、ぎっくり腰は無理のない範囲で動いたほうが、回復が早い場合がほとんどです。痛いからといって過度に安静にしていると、逆に症状を長引かせてしまうので、痛くて全く動けないという状況が治まったら、なるべく普段通り動くようにしましょう。
ぎっくり腰になった時、コルセットはつけた方が良いの?
たしかにぎっくり腰になった際、コルセットをつけると楽に動けるという方は多いです。先述の通り、ぎっくり腰の早期回復のためには、できる限り普段通りの生活を心掛けることが重要ですから、コルセットで楽になり、普段通りの生活が行えるのであれば、有用であると言えます。
「コルセットをつけていると筋肉が落ちてしまうのでは」と心配する方もいますが、寝たきりにでもなっていない限り、コルセットの装着が直接大きな筋力の低下につながることは考え難いです。ただ、長い目で見ると、身体の使い方が下手になったり、筋肉を上手く使うことができなくなることで、二次的に筋力の低下を招いてしまう事は考えられます。
コルセットをつけないで無理に我慢して痛みを長引かせたり、活動性が下がったりすることの弊害の方が大きいとは思われますが、コルセットに頼らずに済むのであればそれに越したことはありません。
痛みと相談しながら徐々に外していくのが良いでしょう。
長引く腰痛や、繰り返すぎっくり腰で受診した場合は、注意深い問診や診察により、他の病気が隠れていないかを確認します。その際、神経の異常がないかもチェックします。
さらにレントゲン検査を行うことが多いですが、神経や椎間板などの組織の状態はレントゲンでは分からないため、状況に応じてMRIやCTなどの精密検査をすることもあります。
他の疾患の疑いがなく、原因の特定を急がない「ぎっくり腰」と診断がつけば、湿布薬や飲み薬などの治療薬が処方されます。急性腰痛の治療薬として主に用いられる薬剤は、ロキソプロフェンナトリウムやジクロフェナクナトリウムなどの成分の入った、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)です。注射も有効で、痛みを取り、炎症を抑える薬を注射することで症状が軽くなり、回復が早まることもあります。
大正健康ナビブログ参照・引用、 東京腰痛クリニックブログ参照・引用 , 小林整骨院様ブログ画像引用
月辰会活法整体院ブログ画像引用