脊柱管狭窄症の本態は、椎間孔と脊柱管の狭窄によります。椎間板膨隆・椎間関節肥大化・黄靭帯肥厚は脊柱の伸展(そり)で増強し、屈曲(かがみ)で軽減します。
脊柱管狭窄症とは
中高年男性に多い脊柱管狭窄症は、神経をおさめている脊柱管の内面が、前からは椎間板・椎体後縁骨棘の突出、後ろからは黄色靭帯の肥厚、横からは椎間関節の棘で狭くなった状態を指します。
椎間板ヘルニアのなれの果ての状態と言えます。
また脊椎すべり症(上下の背骨がずれ)で、脊柱管が狭くなった場合にもありえます。
神経および神経周辺の血管も圧迫されるため、脊柱管内で上下の自由移動ができず、数百m、数十m歩くと痛みやしびれで立ち止まり、休憩しなければ次の歩が進まない間歇跛行(かんけつはこう)が生じてきます。しゃがんだり、前屈すると血管や神経の首絞め状態が開放されるため、再びしばし動けるようになります。
初期から中軽度の場合は、脊柱管内に仙骨ブロック等を定期的に行い、神経周辺を滑りやすくしてやると、歩行距離が延び坐骨神経痛も緩和してきます。
繰り返しのブロック注射でも痛みが治まらない場合は、経皮的内視鏡下脊柱管拡大術(PEL)もしくは内視鏡下脊柱管拡大術(MEL)が必要となってきます。
脊柱管狭窄症の症状
お尻から太ももの裏、ふくらはぎや足にかけて痛みやしびれ、重だるさを訴えることが非常に多い病気です。重症でない場合、腰痛は軽度であることが多いのも特徴の一つです。
歩いていると前述の症状が出現してきますが、しばらく座ったり屈んだりしていると改善してまた歩けるようになるという症状が代表的です(間欠跛行)。
シルバーカーやショッピングカートを押していると楽に歩けるのが特徴で、寝ていたり、座っていると症状は出現せず、自転車に乗ることなども問題なく出来ますが、真っすぐ立っているのには苦痛を伴います。

立位や歩行により坐骨神経痛やしびれが増強

立位で背骨を伸ばすと、脊柱管が狭くなり神経を圧迫します。
前方では椎間板の膨隆が増大し、側面では椎間孔が狭小化し、後方~後側方では黄靭帯が弛緩増大化することによります。

座ったり、しゃがんだりすると楽になる

前傾や座位姿勢で、脊柱管は広くなり、神経の圧迫がとれてきます。
前方の椎間板線維輪が緊張し、側面では椎間孔が拡大し、後方・後側方では黄靭帯が伸張されることで神経の圧迫が解除されるからです。

カート等で前傾すれば歩くのが楽である

椎間板の突出(前方)・椎間関節肥大変形(側方)・黄靭帯肥厚変性(後方~後側方)で脊柱管が狭くなることで、全周から神経が圧迫されます。
脊柱管狭窄症の原因と予防
脊柱管が狭くなる原因は様々ですが、多くは加齢に伴う骨や靭帯の変性・変形が原因です。椎間板ヘルニアや脊椎すべり症、骨折などに続発する場合や、先天的に脊柱管が狭いことなども関連していると言われています。
靭帯や椎間板、骨の変性(劣化)は悪い姿勢や重いものを持つ仕事、激しいスポーツなど様々なことが原因になると推測されていますが、直接の関連ははっきりとはわかっていません。遺伝的に背骨の変性が起こりやすい体質などもあるようです。
それらのことから「○○に気を付けていれば脊柱管狭窄症が予防できる」というのもハッキリとは言えないのが現状です。
脊柱管狭窄症の検査
脊柱管狭窄症の診断はレントゲンだけでは難しく、MRIやCTなどの検査が必要となります。MRIは神経や椎間板などの柔らかく水分を含んだ組織を詳細に写し出し、CTでは骨が飛び出すことによる狭窄などを確かめることができます。
確定診断のために、神経根ブロック(神経のそばまで針を進めて行うブロック注射)や造影検査(造影剤を注射する検査)などの検査を追加して行うこともあります。脊柱管狭窄症は画像の結果と症状が一致しないことも多く、注意して診断を行う必要があります。
また、閉塞性動脈硬化症などと言った血管の病気によって脊柱管狭窄症に似た症状が出現することもあるため、その鑑別のために血管の検査を行うこともあります。
脊柱管狭窄症の治療
画像検査の結果や症状の強さによって異なりますが、まずは保存療法(手術以外の治療)を行います。痛み止めや血液の循環を良くする薬、ブロック注射、リハビリなどによって症状の緩和を図ります。
保存療法で効果が見られない場合や、症状が強く生活に大きな支障が出ている場合、足が動きにくかったり尿が出にくかったりなどの症状がある場合には手術療法を選択します。
ブロック注射
主に「仙骨部硬膜外ブロック」と呼ばれる注射を行います。尾骨(お尻の骨)付近から注射を行い、脊柱管内に薬液を流します。薬液の効果で痛みの信号をブロックすることからそのように呼ばれています。
痛みを抑える効果は永続的ではありませんが、神経の癒着をはがしたり、痛みを引き起こす物質を洗い流すことができることから、大幅な改善がみられることもあります。一度では効果が見られなくても、複数回行うのが一般的です。
薬による治療
ロキソニン®やボルタレン®、バファリン®、カロナール®といった一般的な鎮痛薬の他、リリカ®やサインバルタ®といった神経の薬、オパルモン®などの血流を改善する薬、痛みに効果がある抗うつ薬などが有効であると言われています。
手術による治療
手術を選択するかどうかの判断基準
保存療法(手術以外の治療)で効果が見られない場合、手術が検討されます。
日常生活に大きな支障が出るほどの症状がある場合や、足の動きが悪くなる・歩けなくなるといった症状が進行している場合などは放置しておくと後遺症が残存する可能性があるため、早期の手術適応と言えます。また、尿や便が出にくくなったり、漏れてしまったりする「膀胱直腸障害」と呼ばれる症状が出現した場合はできるだけ早く手術をすることが勧められています。
患っている期間が長いほど十分な改善が見られないという報告もあることから、あまり我慢しすぎるのも良くないかもしれません。もちろん症状の程度にもよりますので、手術の適応についてはご相談ください。
脊柱管狭窄症の治療の一環でマッサージや整体は行っても良いのでしょうか?
脊柱管狭窄症の治療において、マッサージや整体は一般的には推奨されません。これらの施術は筋肉の緊張を和らげたり、血行を改善したりするため、症状の緩和に役立つことがありますが、脊柱管狭窄症自体の根本的な治療にはなりません。
治療には、主に以下のような方法が用いられます。
- 薬物療法: 痛みを和らげるための鎮痛剤や抗炎症薬。
- 物理療法: 特定の運動やストレッチで筋力を強化し、症状を軽減する。
- 手術: 重度の場合、脊柱管を広げる手術が行われることがあります。
マッサージや整体を受けること自体は、症状の緩和に役立つこともあるけど、まずは医師に相談してからがベストですよ。脊柱管狭窄症の場合、症状や進行具合によって適切な治療法が異なるから、専門家のアドバイスを受けて、自分に合った方法を選ぶことが大切です。安全第一を考えてくださいね。
脊椎狭窄症の症状を緩和するために役立つマッサージには、いくつかの方法があります。以下のようなマッサージが効果的です。
1,脊柱前面マッサージ:背中の前面を軽くマッサージし、筋肉の緊張を和らげます。
2,脊柱後面マッッサージ:背中の後ろ側をマッサージし、筋肉の緊張をほぐします。
3,脊柱側面マッサージ:背中の側面をマッサージし、筋肉の緊張を和らげます。
4,脊柱底部マッサージ:背中の底部をマッサージし、筋肉の緊張をほぐします。
これらのマッサージは、脊椎狭窄症の症状を和らげるのに役立つことがあります。ただし、自己マッサージを行う場合は、無理をせず、痛みを感じたらすぐに中止し、専門の医師や理学療法士に相談し、自分の症状に合った治療法を選ぶことが大切です。
くれぐれもあなたの健康を第一に考えてくださいね!
あいちせぼね病院ブログ参照・引用